1985年5月21日火曜日

外来2


さもない外来担当医の、かすかな喜び

 大学にいると、頼まれ外来の依頼が結構あるものです。どの病院も常勤医の不足感は否めません。土日は一応、外来はお休みの国公立系の 大学病院に対し、土曜日は外来を開いてる私立病院などでは、医師の派遣を大学に土曜日にお願いすることは、比較的よくあることです。まあこれは日本のどこ の地方でもだいたい同じだと思います。うちでも昔は、土曜は外勤とほとんど決まっていました。そんな、ちょっと昔の話ですが。
「あ、先生、次の患者さん、外来のXXさんのお母さんです」
「え?・・・^^;)・・・そ、そう・・・」
 患者さんは全部平等に診なければならないわけですが、さすがに、いつも外来で一緒に診察しながら世話になっている看護師さんのお母さんとなれば、 ちょっとは気を使う・・・と言う側面は否めません。なにしろ、医者を見る目に関しては、世界で一番厳しい目で見る職種の一つが看護師さんであると言えるこ とには、ほとんど反対の意見はないのではないでしょうか? でも、看護師さんが、わざわざお母さんと連れてきてくれるのは、それだけ頼りにされているのか な?と、ちょっとだけ嬉しかったりもしますが、その分もちろんやや慎重にもなります?
 粗相のないように・・・と、ちょっと緊張していると、
 とっとっと・・・と、速足で駆け込むように診察室に入り込んでくる小柄なおばあさん。
 えっ?・・・と、思っていると、後ろから追いかけるように、いつも外来で一緒に診察している看護師さんが私服で入ってきます。
 まあ、車いすの患者さん、杖の患者さん、いろいろいらっしゃりますが、駆け込んでくるような患者さんは、小児科でもないのにちょっと珍しいかも?
 いつもの外来看護師さん。今日は非番かな?
 「先生、うちの母なんですが、前からここの病院で、不整脈で診てもらってたんですが・・・」
 「はい・・・」
 「この間からず~っと心房細動みたいで・・・」
 パラパラとカルテをめくると、確かに何回か発作性の心房細動になっているが、少し前から、慢性の心房細動で固定してしまったらしく、リスモダンに、バイアス、ペルジピンと、一応、当時の標準の抗凝固も行っているみたい。(いまならもちろんワーファリンですね)
「いつくらいから、ドキドキしましたかなあ・・・」
 ゆっくりゆっくり、聞いてみる。
 ところが、 「うん、うん」 と、目をそちこちにキョトキョトさせ、そもそも、こっちを見てくれず、なんか、僕の話を聞いてくれてないみたいな・・・と、いうか、ギシギシ身体を揺らして、なんともかんとも落ち着かない風情。ううん、ディメンツかしら?・・・看護師さんのお母さん・・・困ったなあ
 「ほら、おかあさん」 看護師さんも困った風。
今日の担当の看護師さんも不安そうに僕を見る。いつもの外来看護師さんも、お母さんを心配そう・・・ううん、こういう時は、
 「う~ん、まず、診察してみましょうか?」 と、話しかける間にも、もう患者さんは席を立とうとする様子で、落ち着かない。 ううん、ここまでじっとできないのは、さすがにプシコかなあ・・・躁鬱病の可能性は確かに高そう・・・精神科は専門じゃないんだけど・・・と、ここまで考えて。
     あ!・・・と、気がつきました。

・・・・・わかった方もいましたよね、答えはこちら

0 件のコメント:

コメントを投稿