2006年4月24日月曜日

人体の脈の波形がカオス的なダイナミクスを呈する理由


血圧の脈波がカオスになる原因

心拍変動や血圧の時系列変動曲線にカオス的なダイナミクスが存在することは指摘されて久しい。
lorenz.jpg カオス的なダイナミクスは低自由度の非線形システムに発生する数学的な概念であるが、数多い制御系が関与する心臓血管系に置けるダイナミクスに発生するカオスの成因は明らかにされているとは言い難い。
そこで東北大学では血圧制御系に注目してシミュレーション実験を試みた。
ウインドケッセルモデルを用いた左心循環系の電気回路モデルに、Cavalcantiらのシミュレーション回路を元に血圧反射のフィードバック系を加えた。
ida3.jpg フィードバック回路には人間の統計データを元に相互の相関に非線形性を加えた。
その結果、血圧反射のフィードバック回路の時間遅れが短い時には時系列は一定の値に収束し、古典的なホメオスタシスを示唆する結果となったが、時間遅れを大きくすると発振から分岐を来してカオス的なダイナミクスの発生が認められた。
この結果を基に動物実験を行った。
健康な山羊を用いて麻酔下に左開胸して人工心臓の埋め込みを行った。
麻酔から覚めた後、自動制御システムを用いて人工心臓の最適動作点制御、左右バランス制御を行ったが、時系列は一定に値に収束する定値制御系となった。
より生理的な制御を目指して、これらのベーシック制御に加えて血圧反射制御を試みたところ、カオス的なダイナミクスの発生が観察された。
従って数理解析電気回路モデルでも動物実験でも、血圧反射系がカオスを発生させている現象が観察されたことになる。
現在更に研究を進めて、ロータリーポンプによる完全無拍動循環でも、血圧反射によってゆらぎが発生することを確認している。
血圧の脈波にカオス性が存在する原因は、血圧反射に求められる可能性があることを直接的に証明する実験結果であるものと思われた。

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