2009年12月25日金曜日

脳血管の運動


brain 脳血管運動と自律神経

 任天堂の脳トレシリーズに代表されるように、計算/暗算などの簡単な脳神経活動負荷と、脳血流分布の関連性が注目されています。今月号の自律神経には、脳血管運動と自律神経支配に関する解説記事が掲載されています(自律神経46,2009)。
 そもそも、脳循環には、還流圧を一定範囲に保持する自動調整能が存在し、脳卒中等の発生を予防する代表的ホメオスタシス機構が存在することは広く知られていますが、必要に応じて脳循環をコントロールされる機構が存在することはMRIなどの血流分布解析により明らかです。
 脳循環に関与する因子として、自律神経、内皮細胞、一酸化窒素、二酸化炭素も関係していますが、レニンアンギオテンシン系など液性因子の関与もあ るようです。最近では、ノルアドレナリン、アセチルコリンなど、交感神経/副交感神経の因子だけでなく、セロトニン系の関与も注目されているようです。
 自律神経をゆっくり休養させて、脳神経活動を十全に発揮する体調を目指すべきだと考えられます。


Can personality traits predict pathological responses to audiovisual stimulation?
Yambe T, Yoshizawa M, Fukudo S, Fukuda H, Kawashima R, Shizuka K, Nanka S, Tanaka A, Abe K, Shouji T, Hongo M, Tabayashi K, Nitta S.
Biomed Pharmacother. 2003 Oct;57 Suppl 1:83s-86s.

 
更新日時:2009/12/25 13:14:21

2009年12月16日水曜日

自律神経


そもそも自律神経って何?  Autonomic nervous system

 医学の父と呼ばれているのは古代ギリシャのヒポクラテス(450?~370?BC)で、「観察こそ医学の基本である」と強調したと言 われますが、ギリシャ文明の衰退とともにローマ帝国の全盛時代となり、「医学の皇太子」と、呼ばれるガレノスが実質的にギリシャ医学をまとめあげました。 現在の解剖学の交感神経節や、迷走神経はガレノスの記載が歴史上最初と言われていますので、自律神経学はローマ帝国に起源があると言えるかもしれません。
 脳神経系は、人体の末梢と神経系を介して密接に結びついているわけですが、末梢より中枢へ興奮を伝える神経を求心(感覚)系(経路)、中枢から末梢へ興奮を伝える神経を、遠心(運動)系(経路)と呼んでいます。
 骨格筋を支配している遠心系、並びにこれと機能的に結合している求心系を体性神経系(Somatic nervous system)と呼び、意識に関係なく内臓を制御する神経系を自律神経(Autonomic nervous system)と呼びます。(Guyton AC, Textbook of Meical Physiology)
 自律神経系の末梢部は、交感神経系と、副交感神経系により構成され、主として胸腰部に中枢があるものを交感神経系と呼称し、中枢が中脳、延髄、及び仙髄にあるものを副交感神経系と呼称することに解剖学的にはなっています。
 主たる内臓は、交感神経と副交感神経の二重支配を受け、その多くは拮抗して働くことが知られています。(生理学通論、共立全書1972)
 自律神経系のシステムには、交感神経、副交感神経、腸管神経、副腎クロム親和性細胞として、神経堤細胞から分化したシステムとして一体化して理解することもできます(Promer on the Autonomic Nervous system)
更新日時:2009/12/16 16:21:36
キーワード:[自律神経] [交感神経] [副交感神経]

2009年12月1日火曜日

baroreflex


血圧反射機能baroreflex

 血圧反射機能とは、ホメオスタシスの一種であり、自律神経機能を介した、血圧の値を一定の範囲に保持するための反射システム。血圧反射、動脈圧反射、圧受容器反射と表現されることもある。 本態性高血圧症の患者の一部では、この血圧反射機能の感受性の低下が高血圧の原因の一つになっていることが知られている。
 血圧を感知する圧受容器は、頚動脈洞と大動脈弓に存在し、血圧の変動を感知している。血圧が上昇すると、圧受容器が反応し、反射的に、心拍数が下 がり、心筋の収縮力が低下し、動脈が拡張するので血圧が下がって正常値に復帰する。しかしながらある種の高血圧患者では、この反射の感受性が低下し、高血 圧の病因となる。
 血圧反射の感受性は、血圧の変動に対する心拍数の変化などで診断される。すなわち、薬剤注射などによりを血圧を上昇させた際に、心拍数の減少を記 録し、血圧の上昇量に対する心拍の反応で診断を行う。しかしながらこの方法では、心臓の血圧反射機能は診断できるが、血管系、動脈系の血圧反射機能は診断 できない。
 そこで、血管の血圧反射機能を定量的に診断するために、最近では脈波伝播速度などから動脈の血圧反射機能を診断する方法も提案されている(心臓リハビリテーション14(1)108-114)
 心臓の血圧反射機能と、動脈の血圧反射機能を、独立して精密に定量診断できれば、高血圧患者の病態に応じた最適な医療が可能になる点で興味深い。 すなわち、心臓が血圧反射機能が不十分で血圧が上昇している場合の薬剤や食事指導の選択など、精密できめ細かい予防医療が可能になり、薬剤選択においても重要な知見をもたらすこととなる。
 薬剤や統合医療治療により血圧反射機能が改善した例も報告されているので、血圧反射機能の定量診断は、高血圧における薬剤選択に決定的に重要な診断基準になりうる可能性を秘めており、研究が進められている(日本統合医療学会誌1;28-32)。
 我々の研究では、ある種の薬剤投与で、心臓の血圧反射機能だけでなく、動脈の血圧反射機能が改善した症例も確認されており、よりきめ細かい高血圧治療のために、病態生理学的な精密診断は、最適な医療を行うためには、今後ますます必要になっていくと思われる。
更新日時:2009/12/01 16:44:24
キーワード:[血圧反射機能] [高血圧症] [本態性高血圧症] [動脈の血圧反射機能] [脈波伝播速度]