2013年12月19日木曜日

全か無かの法則に従う心室収縮と人工心筋

 全か無かの法則(=悉無律)は、医学部の生理学の授業で習いますが、神経細胞の興奮、あるいは、筋肉細胞の興奮の伝播スタイルを提示する事象です。
 神経でも、筋肉でも、加えられた刺激が、限界値(閾値)より弱い場合は全く反応しないのですが、閾値に達すると、いきなり反応するわけです。その大きさは最大限度であり、それ以上に刺激を強めても、反応は大きくならないので、全部、反応するか(全か?)、一切、反応しないか(無か?)の2種類しかないわけです。つまり、反応にはこの両極端しか存在しない、ということを示した法則で悉無律と、呼ばれるわけです。
 これに対して、心臓では、右心房にある洞房結節で発生した心筋収縮の刺激は、右心房壁の固有心筋細胞を波状に伝わります。このときに心房が収縮し、心臓へ血液を送り込むわけです。この電気刺激は、右心房の下方で心室中隔近くに存在する房室結節(田原結節)に伝わります。日本人がこの結節を発見したんですね・・・・、昔の人は偉かった。
 この田原結節で、刺激の電導が極端に遅くなり、心房と心室の収縮が整うわけです。田原結節を出た刺激伝導系は、ヒス束)に移行して右心室と左心室の間の心室中隔に入ります。ヒス束は心室中隔に下降してまもなく、左脚と右脚に分岐し、左脚はさらに前枝と後枝に分岐します。ヒス束に始まるこれらの線維はプルキンエ線維と呼ばれますが、伝導速度は比較的非常に早く、心室内膜下に至り、心室心筋に刺激を伝導するわけです。
このプルキンエによって、心室全体が協調した収縮をすることができることになります。
 この協調した収縮を再現しようとしているのが、人工心筋プロジェクトです。

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